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ラディコン スラトニック 2021年

2023年7月31日

ラディコン スラトニック 2021年のレビュー

それでは、ワイン歴15年以上。ワインショップ店長!ワインエキスパートがレビューします。

テクニカルデータ

商品名:ラディコン スラトニック 2021年
Radikon Slatnik 2021

価格:5,500円(変動します)

呼称:イタリア/フリウリ ヴェネツィア ジュリア/IGT ヴェネツィア・ジューリア

タイプ:オレンジ/辛口

品種:シャルドネ/フリウラーノ

栽培:1995年から畑での除草剤や化学肥料などの使用をやめ、化学薬剤の介在がない農法へと移行

アルコール度:14度

備考:果実感もあって皮や種由来の複雑味があるワインをイメージして造られたキュヴェ

インポーター:ヴィナイオータ

テイスティング

「外観」、「香り」、「味わい」ごとに解説します。

外観

  • 琥珀色
  • 微かにピンクがかったオレンジ色
  • 粘性は中程度

香り

  • 豊かなファミック(オーガニックの個性)
  • ナッツ
  • ピーチ
  • アプリコット
  • ジャスミン

味わい

  • ドライフルーツ、コンポートしたオレンジのような果実味
  • ジャスミンティーのようなタンニン(苦味)
  • ピーマンや青いトマトのようなハーブ系のニュアンス
  • 酸味と程よいタンニンの余韻

料理とのペアリング

白よりコクと複雑味があるオレンジワインは揚げ物と相性が抜群。
画像はコーン入りメンチカツ。
豊かなタンニンとブドウの旨味は油を含んだ料理とマッチする上に、口の中の油っぽさをスッキリとさせてくれる。
メンチ以外にも、カツや魚のフライ、揚げ餃子等とも合うだろう。

生産者

ラディコン(Radikon)
1807年にフリウリ ヴェネツィア ジューリア州オスラーヴィアに設立された。
第一次世界大戦の終戦後間もなく、1920年に現当主サシャの祖父エドアルド(エトゥコ)によってワイナリーが始められ、1980年よりサシャの父スタニスラオ(スタンコ 当時23歳)にワイナリーは委譲された。

それまで量り売りしていたワインを自らボトリングするようになり、スタンコが引き継いだ当初は、世界に通用するワインを目指し、シャルドネやソーヴィニョンなどの国際的なブドウの導入、ヘクタールあたり9500~10000本という高密植、圧縮空気式の圧搾、バリック内での醗酵と熟成、という当時の白ワインの世界で最上と考えられてきた醸造方法を実践していた。

赤のように複雑な白を、できる限り自然な醸造で

最上の醸造を実践した結果、ラディコンはフリウリを代表するワイナリーとして評価を高めることになる。
生まれ故郷であるコッリオは伝統的に白ワインの産地であり、スタンコは「赤ワインが白ワインよりも高価に取引されている事実は、赤の方が白よりも複雑な味わいを持ち、価値が高いものであると世間から認識されているからではないか?」と疑問を持つ。
赤のような複雑な味わいの白、それを出来る限り自然な醸造で造ることができないかと考察を重ねていく。

スタンコは父エトゥコが行なっているマセレーション(皮や種ごとの醗酵)という仕込みに着目。
1日目、2日目と収穫されたブドウを除梗もせずに皮や梗ごと木桶に漬け込むと、自重で潰れたブドウからジュースが出て醗酵が始まるのだ。

★父がマセレーションを行っていた理由は下記の3つ

  1. 電気のない時代に、粒の大きな完熟したリボッラを手動の圧搾機で絞ることが難しかった。
  2. 皮に含まれるタンニンが天然の酸化防止効果を持つ。
  3. 皮を漬け込むことで皮が柔らかくなり、手動の圧搾機でも限界まで搾れるので、その分果汁が多くとれ収量が増える。

白ブドウを赤ワインのように仕込む・・、今ブームのオレンジワインの醸造法である。

土着品種リボッラ ジャッラでのマセレーション

Agne27 - 投稿者自身による著作物

1995年に土着品種である「リボッラ ジャッラ」こそ自分たちの土地に適合してきたブドウであり、最も注目されるべき品種だと考えるようになる。
そして畑での除草剤や化学肥料などの使用をやめ、化学薬剤の介在がない農法へと移行。

コルクやボトルまでも、ワイン界の通念を壊していく

ラディコンは良質な天然コルクが今後入手困難になることを想定。
そして、コルク業者に今までにない細いコルクを、ボトル業者に小さな口径の瓶を開発してもらい、2002年からボトルを750mlから500ml&1000mlに変更。
空気の接触率が従来の750mlと同じで酸化しにくく、ランチでも2人で飲める500mlのボトルを導入した。

息子サシャへのバトン、セカンドライン(Sライン)の誕生

2006年から息子のサシャがワイナリーの経営に参画。
2009年からスタンコが個人事業主だった状態から、サシャと共に会社組織へと変更。

2016年9月10日スタンコ ラディコン永眠(62歳)。
サシャが当主となり、母スザーナと共にスタンコの意志とワイナリーを引き継いだ。

ブルーライン(通常のキュヴェ)は長期間の醸し醗酵による、ブドウから最大限の抽出を行っている。
その醸造法由来の豊かなタンニンを丸くするため、生産量の8-9割を占める白ワインは、樽できっちり3年寝かせ、ボトリング後も瓶で3年寝かせているため、収穫年から約6年後にリリースされる。
(赤にいたっては収穫年から約10年)。

その時間的、空間的コストのリスクを軽減するために、サシャの提案で生まれたのがS(サシャ)ライン。
生産量の一部だけでもできるだけ早い段階で現金化し、リスクを軽減すると同時に、結果生産量が減ることになる上級キュベに、より強いスポットライトが当たるようにするセカンドラインの仕込みが始まる。

樫の開放醗酵槽にて8~10日間のマセレーションとアルコール醗酵(期間はヴィンテージによって異なる)、圧搾後2500~3500リットルの大樽にて12か月間醗酵の続きと熟成を行い、ステンレスタンクで数か月休ませ、瓶内で2か月間熟成を行いリリースされる。

二酸化硫黄は瓶詰め時に少量のみ添加。

ラディコン スラトニックとは

スラトニックは彼らがスロヴェニアに持っていたブドウ畑の名前。
父スタンコが歩んできた道をサシャ自身がなぞっていくことで、スタンコがどのように考え決断をしてきたのかを知れるのではないかというサシャの思いが込められている。

本当はサシャがワイナリーに参画した2006年から造る予定だったが、スタンコを説得するのに時間がかかり、ファーストヴィンテージは2009年に。

(インポーター資料から抜粋)

ワインエキスパートの総評

フリウリと言えばラディコン、ラディコンと言えばオレンジワイン。
そう語られるのも頷ける個性とポテンシャルに溢れた1本。

開けたてはオーガニック特有のファミックさとナッツのような香ばしさを感じる。
ドライフルーツのような甘味と程よいタンニンのバランスが絶妙。
ジョージアよりもエレガントなオレンジワインに仕上がっている。

敢えて一週間くらい引っ張って味の変化を楽しみたい。

コラム【価値観を変える破壊力】

ラディコンは美味しいが、かなりの個性を感じさせる。
万人受けするワインではなく、通に好まれるだろう。
現在はオレンジワインの認知度が上がっているので、広く知られているかもしれない。

スタンダードのワインしか知らない人が飲んだら、ワインの価値観を一変させる程の破壊力がある。
もしラディコンに感動したら、その感動を周りの人に教えてあげて欲しい。

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「WINE LINE」は無資格状態からワイン業界に転職し現場で揉まれ、ワインエキスパートを取得して最終的に独立まで果たした管理人の雑記ブログです。本業と副業で、ワインショップや酒売場の勤務経験が15年突破しました。ひたすら現場主義!ワインエキスパートと調理師の資格所持。ワイングラス日本酒アワード審査員。宜しくお願いします。 ▶プロフィール・お問い合わせ

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