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【ワイン生産者について語る】稲葉のファンティーニ(ファルネーゼ)とは?

【ワイン生産者について語る】稲葉のファンティーニ(ファルネーゼ)とは?

私は主にショップ店員として15年以上ワインに携わってきたが、ワイン業界に従事していて必ず目にするワードは「稲葉」「ファルネーゼ」である。
今回はコスパが高いファルネーゼ(ファンティーニ)をメインに、そして少しだが稲葉に関しても解説していく。

ワインの稲葉

株式会社稲葉とはワインインポーターだ。
「ワインの稲葉です!」とは、彼らが電話に出る時の定番挨拶である。

自社ワインを愛してやまない精神と、パリッとしたスーツを着こなし如才ない営業を掛けるスタイルが特徴だ。
詳細な生産者情報を掲載している自社サイト、フルカラーのPOP等、売り場の事情を良く理解していて、痒いところに手が届くフォローをしてくれる。
試飲の企画で悩んだら、「取り敢えず稲葉でゴー」と、ある種の安心感を与えてくれるのだ。

ワインの棚割を稲葉に統一しているスーパーもあるほど、コスパが高い安定したワインを扱っているのである。
因みに、ワインインポーターを知りたければワインの裏ラベルに書いてあるので、確認する習慣を付けよう。

ファンティーニ(ファルネーゼ)

ファンティーニ(創立当初『1994年』はファルネーゼ)とはイタリア・アブルッツォ州に拠点を構えるワイナリーであり、稲葉の看板商品である。
当ワイナリーを日本に知らしめたのは稲葉の存在が大きく、業界では「稲葉=ファルネーゼ」と言う公式が成り立っている。

ファンティーニの創立

ファンティーニ(当時はファルネーゼ)の創立に関わったのは3人である。
創立者の一人であるカミッロ氏は既にイギリスの外食事業で成功していたが、「故郷のアブルッツォ州に貢献したい」と言う熱い思いを常々胸に抱いていた。
同じく創立者であるヴァレンティーノ氏とフィリッポ氏はアブルッツォ州のワイナリーで働きながら「もっとハイレベルのワインを造りたい」と思っていた。
そしてカミッロ氏が1994年に帰郷し、二人と出会いファルネーゼを創立したのである。

ポイント

今ではイタリアワインの評価本「ルカ マローニ」でこれまでに9度トップ生産者に選出され、南イタリアで成功を収めた実力派生産者である。

業界で定番!カサーレ ヴェッキオとは

ファルネーゼ(ファンティーニ)を一躍有名にしたワインは「カサーレ ヴェッキオ モンテプルチャーノ ダブルッツォ」である。
当時、人気漫画であった「神の雫」に登場し、売れに売れて、今も尚売れ続けているモンテプルチアーノ ダブルッツォ(略してモンプルorモンプチ)だ。
何事もヒットの裏側には漫画やドラマの影響があるもので、漫画の連載当時は売り場からカサーレ ヴェッキオが消えたほどの人気であった。

モンテプルチアーノ ダブルッツォについては割愛するが、イタリアではキャンティと肩を並べる有名なワインである。
イタリアンへ行けば、どちらかは必ずオンリストされているだろう。

カサーレ ヴェッキオとは他のモンテプルチアーノ ダブルッツォとは一線を画す品質のファンティーニの代表作である。
アロマティックで豊潤なボディ、濃厚な味わいは、同価格帯のフランスワインとは比べものにならないほどリッチであり、漫画で紹介されるのも頷ける。

酒担当者がクリスマス等の試飲会でアイテム選定に悩んだら、「取り敢えずカサーレ ヴェッキオは入れておけ」とアドバイスしよう。

「土着品種でイタリア最高のワイン」エディツィオーネとは

日本ではカサーレ ヴェッキオが有名だが、ファンティーニの名を世界に知らしめたのは「エディツィオーネ チンクエ アウトークトニ」である。
カジュアルワインを造っていた1995年に、著名なワイン評論家であるヒュー ジョンソンからのアドバイスで「土着品種を使って造るイタリア最高のワイン」の生産に着手。
2001年に最初のエディツィオーネが完成し、その後シドニーのワインコンペティションでベストワインに選ばれ、「ルカ マローニ ベストワイン年鑑2005」でイタリア最優秀生産者に選出されるという快挙を達成することになる。

味わいは、とにかく濃厚の一言、それでいて滑らかな口当たりである。
フルボディが好きな方には間違いなくオススメできる逸品だ。

南イタリアの5種の最良葡萄をブレンドしているため、品質が安定しており、いつでも美味しいワインなのだ。

ファンティーニ グループとは

創立当時は3人でも、成功を収めたファンティーニは今や大企業である。
これだけのワイナリーがファンティーニの傘下に入っている。

  • テヌータ ロセッティ(トスカーナ)
  • ファンティーニ(アブルッツォ・本拠地)
  • ヴェゼーヴォ(カンパーニャ)
  • ヴィニエティ デル サレント(プーリア)
  • ヴィニエティ デル ヴルトゥーレ(バジリカータ)
  • ヴィニエティ ザブ(シチリア)

注意ポイント

上記は稲葉のサイトの引用で、他社のファンティーニグループは含まれていない。

【管理人の考察】ファンティーニグループの特徴

ファンティーニグループのワインは樽をしっかりと効かせたものが多いので、大抵バニラのアロマが香り、濃厚でまろやかだ。
それは北の州から南の州まで一貫している。

華やかなバニラのアロマ、濃厚な果実味と滑らかなフィニッシュ、誰が飲んでも美味しい・・、これは業界で言うところの「稲葉味」である。
良く言えば「万人受けする初心者から中級者向けのワイン」だが、逆に言うと「テロワール『ワインの個性』を感じないワイン」なのだ。
飲み進めていくうちに「美味しいけど、どの州のワインも同じ味じゃない?イタリアは州ごとの個性が面白いはずなのに・・」と行き着くはずである。

これはショップ店員側からすると悪いことではなく、むしろメリットになる。
客の大半は上級者ではなく「初心者から中級者」なので、彼らに受ければ店にとっては良いワインなのだ。
そしてどの州も安定して美味しいことは、店側も安心して勧められることと同義である。

故に、クリスマスや年末等、普段ワインを飲まないような客が大半を占める大イベントに稲葉ワイン(特にファンティーニ)の存在は欠かせないのだ。

ファンティーニも「個性とリスク『不安定』が表裏一体」であることは理解していて意図的にグループの色を出しており、稲葉もそれは百も承知なのだ。
売れるワインの醸造・輸出・輸入、それがプロの仕事である。

稲葉だけではない?ファンティーニグループ

全てのイタリア安旨ワインにファンティーニが関わっているのでは・・と思えるほど、ファンティーニの影響力は絶大だ。
それは稲葉だけでなく日本リカーやモトックス等、他社のインポーターにも及んでいる。

ファンティーニ グループは「ワインの名前を少し変えて」、他社に輸出しているのだが、それはコロナの影響で更に顕著になったように思える。

「な~んか、この長方形のラベル、ファンティーニっぽいなぁ、裏ラベルのフォントの書式も・・既視感がある」と思ったら、それは恐らくファンティーニグループが関わっている。
ずんぐりとしたボトル、スタイリッシュな長方形のエチケット(表ラベル)、裏ラベルのお洒落なフォント、それらはグループの特徴なのだ。

片や稲葉のバジリカータ州のファンティーニグループのワイン、片や他社のバジリカータ州のファンティーニグループのワイン、「まさか中身まで同じでは・・?」と思われても仕方ないが、前述した「どの州も似たような味」であることも相まって真偽を判別しづらくなっている。
他社の営業さんとの会話で「これ中身一緒じゃないっすよねぇ?」「う~ん、どうなんでしょう(笑)」のような笑いを伴うジャブのやりとりはある。
ワインの中身は生産者のみ知るところで、流石の稲葉も他社のインポーターも分からない。

ポイント

ただ、私の感覚で考察すると、稲葉のファンティーニと他社では若干味わいが異なる。
インポーターの意向がワイナリーに反映されることがあるのかもしれない。

ファンティーニの定番!おすすめワイン

それでは、コスパが高いファンティーニグループのワインを紹介していく。

定番中の定番!カサーレ ヴェッキオ(2,000円台・赤ワイン)

ワイン漫画「神の雫」で紹介されて、一時的に売り場から姿を消したモンテプルチアーノダブルッツォ。
こちらのワインを飲んで、「ワインが好きになった」と言う人がいるほどの安定した味わい。

ファンティーニの最高傑作!エディツィオーネ(4,000円~5,000円台・赤ワイン)

濃厚な味わい、フルボディ、とてつもない満足感を得られる最高傑作。
値段は張るが、その金額以上の勝ちは間違いなくあると思われる。

レーズンのように甘美な余韻!イ ムーリ ネグロアマーロ(1,000円台・赤ワイン)

芳醇なアロマと、レーズンのような甘味を伴うフィニッシュが美味しい。(甘口ではない・ミディアムボディ)
1,000円台でこのコスパは嬉しい。

ポイント

昔はエチケットのヤモリは中央にプリントされいたが、今では尻尾だけとなった。
そっくりなエチケットのワインが南アフリカにあるので何かあったのかもしれないが、真相は謎である。
営業さんに聞いても明確な答えは返ってこなかったが、ヤモリの由来はブドウ畑の石垣にヤモリが巣を作ることからなので、パクりではなく偶然だろう。

デイリーワインに最適!アリアニコ デル ヴルトゥレ(1,000円~2,000円台・赤ワイン)

生産者のフェウディ・デル・ヴェスコヴォの輸入元は稲葉ではなく日本リカー(輸入元はちょくちょく変わるが、日本リカーのワインリストにまだ掲載されている)であるが、こちらもファンティーニグループである。
バランスが良く、適度に個性もあるミディアムボディで、日常飲みに最適だ。

デイリーワインに最適!バジリカータ ビアンコ(1,000円台から2,000円台・白ワイン)

こちらもフェウディ・デル・ヴェスコヴォである。
華やかなアロマと爽やかな果実味の辛口でファンが多い1本である。

ポイント

以前はグレコ・フィアーノだったが、法律の改正か生産者側の理由でバジリカータ・ビアンコになった。

まとめ

ファンティーニグループのワインは、飲みやすい上に満足度が高くて初心者から中級者に最適である。
私は「カサーレヴェッキオを飲んでワインが好きになった」と言う人を何人か知っている。
スーパーでもよく見掛けるので、是非飲んで欲しい。

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「WINE LINE」は無資格状態からワイン業界に転職し現場で揉まれ、ワインエキスパートを取得して最終的に独立まで果たした管理人の雑記ブログです。本業と副業で、ワインショップや酒売場の勤務経験が15年突破しました。ひたすら現場主義!ワインエキスパートと調理師の資格所持。ワイングラス日本酒アワード審査員。宜しくお願いします。 ▶プロフィール・お問い合わせ

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