ラディコン ピニョーリ 2011年(500ml)
それでは、ワイン歴15年以上。ワインショップ店長!ワインエキスパートがレビューします。
テクニカルデータ
商品名:ラディコン ピニョーリ 2011年(500ml)
Radikon Pignoli 2011
価格:約6,000円(変動します)
呼称:イタリア/フリウリ ヴェネツィア ジュリア/IGT デッレ・ヴェネツィエ
タイプ:赤/ミディアムボディ
品種:ピニョーロ
栽培:1995年から畑での除草剤や化学肥料などの使用をやめ、化学薬剤の介在がない農法へと移行
アルコール度:15度
備考:ワイン名のピニョーリは、ピニョーロの複数形で、ブドウだけでなく造り手自身も厄介なヤツという意味
インポーター:ヴィナイオータ
テイスティング
「外観」、「香り」、「味わい」ごとに解説します。
外観
- オレンジがかったガーネット
- 熟成期間の長さが伺える淡い色合い
- 粘性はやや強め
香り
- ファミック(オーガニック由来)
- 黒い果実
- カカオ
- タバコ
- 腐葉土
味わい
- 豊かな酸味
- 野性的なニュアンス
- キュッと引き締まったタンニン
料理とのペアリング
ピニョーリは野性味と豊かな酸味があるので、サラミやソーセージ等との相性が良いだろう。
ラディコンを訪れると、ワインと共に大量のサラミが出てくると聞いたことがある。
「郷に入りては郷に従え」と言う格言もあるので、試してみよう。
生産者
ラディコン(Radikon)
1807年にフリウリ ヴェネツィア ジューリア州オスラーヴィアに設立された。
第一次世界大戦の終戦後間もなく、1920年に現当主サシャの祖父エドアルド(エトゥコ)によってワイナリーが始められ、1980年よりサシャの父スタニスラオ(スタンコ 当時23歳)にワイナリーは委譲された。
それまで量り売りしていたワインを自らボトリングするようになり、スタンコが引き継いだ当初は、世界に通用するワインを目指し、シャルドネやソーヴィニョンなどの国際的なブドウの導入、ヘクタールあたり9500~10000本という高密植、圧縮空気式の圧搾、バリック内での醗酵と熟成、という当時の白ワインの世界で最上と考えられてきた醸造方法を実践していた。
赤のように複雑な白を、できる限り自然な醸造で
最上の醸造を実践した結果、ラディコンはフリウリを代表するワイナリーとして評価を高めることになる。
生まれ故郷であるコッリオは伝統的に白ワインの産地であり、スタンコは「赤ワインが白ワインよりも高価に取引されている事実は、赤の方が白よりも複雑な味わいを持ち、価値が高いものであると世間から認識されているからではないか?」と疑問を持つ。
赤のような複雑な味わいの白、それを出来る限り自然な醸造で造ることができないかと考察を重ねていく。
スタンコは父エトゥコが行なっているマセレーション(皮や種ごとの醗酵)という仕込みに着目。
1日目、2日目と収穫されたブドウを除梗もせずに皮や梗ごと木桶に漬け込むと、自重で潰れたブドウからジュースが出て醗酵が始まるのだ。
★父がマセレーションを行っていた理由は下記の3つ
- 電気のない時代に、粒の大きな完熟したリボッラを手動の圧搾機で絞ることが難しかった。
- 皮に含まれるタンニンが天然の酸化防止効果を持つ。
- 皮を漬け込むことで皮が柔らかくなり、手動の圧搾機でも限界まで搾れるので、その分果汁が多くとれ収量が増える。
白ブドウを赤ワインのように仕込む・・、今ブームのオレンジワインの醸造法である。
土着品種リボッラ ジャッラでのマセレーション
1995年に土着品種である「リボッラ ジャッラ」こそ自分たちの土地に適合してきたブドウであり、最も注目されるべき品種だと考えるようになる。
そして畑での除草剤や化学肥料などの使用をやめ、化学薬剤の介在がない農法へと移行。
コルクやボトルまでも、ワイン界の通念を壊していく
ラディコンは良質な天然コルクが今後入手困難になることを想定。
そして、コルク業者に今までにない細いコルクを、ボトル業者に小さな口径の瓶を開発してもらい、2002年からボトルを750mlから500ml&1000mlに変更。
空気の接触率が従来の750mlと同じで酸化しにくく、ランチでも2人で飲める500mlのボトルを導入した。
ラディコンのセレクションラインとは?
ピニョーリは「セレクションライン」に位置づけられている。
超長期熟成を経て、納得のいったワインのみを選別してボトリングされ、5~10年の熟成の後ようやくリリースされる。
メルロー、ピニョーリ、モードリの3つの赤ワインは30~40日間のマセレーションとアルコール醗酵を行い、圧搾後使い古しの小樽(スタンコが90年代に樽醗酵樽熟成用に買ったもの)にて5年間醗酵の続きと熟成を行い、ボトリング後さらに最低でも5年間休ませリリースさせる。
赤ワインに小樽を使う理由としては、黒ブドウを植えている面積が小さく、収量が少ない上に年によってまちまちであり、大樽を埋めようにもワインの量が少なすぎるため(ラディコンの生産量の85%は白ワインで、赤ワインは15%にすぎない)。
ラディコン ピニョーリとは
ピニョーロは「小さなことにこだわる」「面倒な、厄介な」という意味のブドウ品種で、アメリカの台木になじまないため栽培が難しく、粒が小さく、酸っぱく、タンニンが強いためワインとなってからもバランスがとれるまでに膨大な時間を必要とするワインとなる。
ワイン名のピニョーリは、ピニョーロの複数形で、ブドウだけでなく造り手自身も厄介なヤツという意味で、スタンコのお茶目さが出ている。
正式にリリースとなったのは2004年ヴィンテージから。
(インポーター資料から抜粋)
ワインエキスパートの総評
ファミックで野性的、中々の個性を感じるピニョーロ。
熟成由来の淡い色合いはネッビオーロを彷彿とさせるが、似て非なるものである。
バローロ程のタンニンは感じられない。
何気にアルコール度が15%もある点は見逃せない。
ピニョーロ自体、若いうちはヤンチャなタンニンと酸で飲みにくいので、「ピニョーリ」は12年も熟成させている。
手間と時間が掛かったピニョーロを是非飲んで欲しい。
★熟成期間が長いのでヘタリが速い。2日ほどで飲みきろう。(500mlの場合)
コラム【アルコール度数について】
ワインのアルコール度数は大体13%である。
フレッシュな白ワインなら11%から、フルボディの赤ワインでも14.5%程だろうか。
ニューワールドの濃い赤ワインなら希に15%に届くこともある。
アルコール度数はブドウの糖度に関係してくるので、温暖で良く熟したブドウから造られるワインは度数が上がる。
故にアメリカやチリ、オーストラリア等のフルボディのワインはアルコール度数が高いことが多い。
最近は温暖化の影響でその特徴は顕著に出る。
そのように考えると、北イタリアのラディコンでアルコール度数が15%もあることは、注目すべき点である。
ラディコンの醸造方法、ピニョーリと言う品種の特徴が、そのようにさせたのかもしれない。
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